工作機械における「人間工学」~詳細編~


前回の続きです。

では、具体的にどうすればいいかという話を解説していきます。

まずは、身長の分布です。

日本人とアメリカ人で差異があるため、今回は日本人の成人男女で考えます。

そして、サンプルのうち、身長がMAX5%、MIN5%を取り除いた90%を対象とします。

そのグラフが下図になります。

例えば男性で見ると、この場合「1582mm~1794mm」の身長の人を対象としているということです。

次に操作力の方向(位置)について。

筋活動及びエネルギー代謝を考慮すると、下図の立体作業点を見ると、肘高付近が一番良いとされます。

ちなみに体の位置より300mm以上離すと一気に負担がかかってしまうことに注意です。

今度は、胴部高さ付近で作業する時の楽に作業ができる前方水平範囲を考えます。M5PC(上図の①の男性)の場合、手前450mmが無理なく操作できる距離だとわかります。

また、楽に手が届く距離は、高さが変化すると、約60度の線に沿って変化するそうです。

最後に高さ方向についての操作性ポジションです。

大きい人が、上腕を動かせる、垂直面の前後間隔の最小限界値は400mmです。このとき、男女で共通して楽にできる操作範囲は、上が1650mm、下が1350mmである事がわかります。

以上、ポイントを説明しましたが、もっと詳しくなると、手の指から手首、腕、肩、大腿骨と骨盤、それを支える胴と胸部。頭の位置関係、足の爪先に着目して構造を固めるべきだと思います。

とにかく、まずはこういった人間をメインにポジションを考えていく。そうすることで、ある程度パワーパッケージが見えてきます。

 

もちろん、ベッドや主軸から設計するところが多いのは事実です。が、それらは機械構造がメインです。そうではなくて、パズルのように1つ1つをはめこむように、機械要素を合わせた「あるべき形」を考える。

そのパッケージングレイアウトの原点が実は「人間」なのです。無人化が進んでいますが、操作するのは結局「人間」です。

 

なぜか、そういったことについて書かれた「専用本」が減っている。残念です。

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